八月になりました。
子供の頃の夏休みは、
いつ終わるかわからないほどながく、
うだるほどの暑さでめまいがしそうでした。
私が生まれ育ったのは、広島県の呉市。
瀬戸内海が南に横たわる夕刻、
風はピタリとやみ、
潮風が運ぶ高い湿気のなか、
汗が止まらぬ魔の時間です。
日々の日課として、
犬の散歩をしていたのですが、
彼も散歩の途中で根をあげて、
座り込む始末。
(どうすんだよ。抱えて帰れないぞ)
「こら、捨てちまうぞ! 歩け」
彼は恨めしそうな顔で私の顔を見上げ、
しぶしぶ歩き始めました。
昨夜の夢の一場面……。
私の潜在意識は何を伝えたいのでしょうか?
よくよく考えてみると、
愛犬は今の私かもしれません。
現状に満足し、
歩みを止めようとしている私に
叱咤激励のむちをくれたのかもしれません。
めまいがしそうなほど、
暑苦しく蒸し暑い日常が続きますが、
舌を出し、首と尾を振りながらでも、
歩き続けようと思います。
きっと、
その先には過ごしやすい秋、
実りの季節がやってくる。
例えそれが幻だっとしても、それでいい。
歩みをとめないことに価値があるのだと感じています。
藤山勇司