IT技術の進化は、物件調査時間を著しく削減してくれました。
不動産価格は、土地値と建物の残存価格の合計金額です。
土地値を調べるには、
1.路線価からの調査
2.売り物件情報からの調査
主に2つの調査があるわけですが、いずれもパソコン一つで判明します。
しかも、
3.競売不動産には評価書が添付されていますから、
不動産鑑定士の調査も併せて活用できます。
貸家の収入源である家賃もウェブ上の物件情報から、
ほぼほぼ特定できます。
「昔はどうだったの?
そうそう、なんでさ
北海道のアパートを買ったの?
もっと近くで良かったでしょ」
私が兼業大家さんの道に踏み出したのは、
勤務していた大倉商事に
「競売不動産の再販売プロジェクト」
の稟議を否決されたからでした。
あれは、辛かった……
いや、本当に。
と、申しますのは、
平成の元号が社会に馴染み始めたころ、
リクルートの住宅情報誌の最後の方に
競売情報が添付されていたのですが、
特にマンションなどは、
総戸数や大雑把な住所から
マンション名を特定できました。
そこで、
中古マンションの価格と競売不動産の価格を比較すると、
いずれも半値はおろか、40%以下の価格!
ならば、
商社金融を生かし、
競売不動産を次々と落札して
リフォーム後に転売すれば、
事業として成り立つのではないか。
そう思ったのです。
「それって、転売業者じゃん」
そう、その通りです。
ただし、
大手不動産会社は、
ブランドがありますし、
自ら売り出した物件を競売で
落札することもあり得るので、
参入できません。
いずれの転売業者も
怪しい、
氏素性の知れない輩の独壇場でした。
最初に稟議を提出した際の回答は
「実績がないから検討に値しない」
でした。
ならば、
自ら実績を作ろうと一念発起!
レバレッジを効かせた株式投資で
資金を捻出し、2物件を落札!
付近の不動産業者に売り出し価格の
見積もりを作成していただき、
これを推測販売価格資料として
添付して再度稟議を提出しました。
「結果はどうだったの?」
高評価でした。
子会社を作り、
本体との流れを遮断し、
大倉商事は
子会社に高利(年利14%)の資金を貸し付け、
金利で収益を還元させる方法も提案し、
3億円の資金を元手にして発足する寸前でした。
「やったじゃん」
ところが、
役員決済の場で
当時の副社長の
『歴史あるわが社が、競売ねぇ……、いかがなものでしょうね』
と、いう何気ない一言で
事態は急変!
一緒にコトを勧めていた本部長は
『副社長の仰る通りです。私もその点を懸念しておりました』
と、見事な手のひら返しをかましてくれまして、
私の元には
(同様の稟議を再提出するべからず)
と、断罪されたのです。
私の手元には
中古マンション2戸と
入札したばかりの中古マンション1戸。
しかも、残金納付のお金はありませんでした。
子会社を立ち上げ直後に
売上を上げるための隠し玉で
先行して私が入札した物件だったのです。
「やばいじゃん。
残金納付できなかったらさ、
保証金没収でしょ」
会社の組合経由で
労働金庫からお金を引っ張り
事なきを得たのですが、
もう、前に進めません。
株式で儲けたお金は
出払いましたし、
会社は競売不動産の再販売プロジェクトには
明確なノーを突き付けています。
「どうしたの?」
全部売り払って
豪遊してウサを晴らそうか……
そうも思いはしましたが、
結局虚しさしか残らないのだろう。
と思い至り、
売らないなら、貸すか!
と方向転換して、大家さんの拡大に
大きく舵を切ったのです。
しかしながら、
当時は
情報が一元化していません。
何かを調査しようとしても
通常の本屋さんに
不動産投資本もありませんし、
競売不動産の解説書もない。
さらに申し上げれば、
不動産の相場を調べようにも
近くの物件であれば、足で調べられますが、
遠方の地域情報を調査することは不可能でした。
結果として
向かったのは
永田町の国会図書館です。
土曜日に開館前に並び、
閉館までいる生活を続けました。
「何を調べたの?」
全国主要都市の
中古アパート価格と家賃の関係です。
いろいろ調査した結果、
有望な都市は、
1.仙台
2.北海道
3.松山
4.長崎
の4つでした。
もちろん、
最初に行ったのは
東京から比較的近い
仙台です。
金曜日の午後11時半の深夜バスに乗り、
土曜日の午前6時につき、
そこから不動産業者に顔を出し、
物件を見せてもらい、
親交を深めて酒を酌み交わす。
私のいつものスタイルでした。
「仙台の物件ってあるの?」
いえ、
諦めました。
「なんで?」
仲が良くなると、
仙台の不動産業者さんは
・なんで、東京くんだりから来るの?
なんか気に喰わないんだよな、東京もんは……
と、不満を漏らすのです。
そこで、
☆いやいや、私は東京在住ですが、
両親は山口の萩出身です☆
と、いう必要のない言い訳をすると
彼らのテンションはヒートアップ!!
・なぁ~にぃ! お前は長州もんかぁああ!
会津の敵が何しに来たんだ。
酒癖の悪い方だったのでしょう。
そう思い、
他の業者に鞍替えしたのですが、
どうにも
しっくりこない。
彼らと心の奥底で手を結ぶことは困難だと判断し、
仙台から札幌に投資地域を変更したのです。
「札幌ではどうだったの?」
仙台では
不動産業者周りから始めたのが
失敗した原因の一つではないかと考え、
ススキノの高級クラブに狙いを定めました。
「???いやいや何も関係ないでしょ」
風が吹けば桶屋が儲かる
このコトワザを参考にしました。
つまり、
・腕のいい不動産屋はお金を儲けている
↓
・金を儲けた不動産屋はネオン街に繰り出す
↓
・札幌のススキノの高級クラブには腕のいい不動産業者がいる。
↓
・高級クラブのママに信用されれば、腕のいい不動産業者を紹介してもらえる。
私は、
ふと思いついた勝手な仮説にすがりました。
「どうやって高級クラブを見つけたの?」
流しのタクシーに乗り、
ススキノをぐるぐると回りました。
運転手さんが不審を抱いたころに
信用のできる高級クラブを紹介してもらったのです。
結果として、
信頼できる不動産業者に出会い、
新築アパートを続けざまに3棟建てました。
「へぇ~、それが快進撃の始まりだったのか」
まぁ……
そうとも言えますね。
「何、その奥歯に物が挟まった言い方は?」
””新築物件は時とともに価格はダダ下がる””
北海道の新築物件も
この法則に抗うことはできません。
新築から10年も建つと、
私のアパートの中古市場価格は半値になる。
当然、
10年で借入額が半分になっていませんから
物件そのものは、
世にも恐ろしい
””不良債権”“
になっている事実に気づいてしまったのです。
私は新築アパートから上がるキャッシュフローに
給料をつぎ込み、
自己資金で競売不動産を次々と落札し、
財務基盤と収益の改善を図り、
今に至る行動原理を確立したのです。
「ふ~ん、
でも面白かったでしょ。
次々に問題を解決して
資産も収益も増えていくんだからさ」
そう見えるのでしょうね。
ただ……
「ただ、何?
何が言いたいの?」
どこか不安でした。
なぜなら、
どこにもつながっていない孤独感が
当時の私を苛んでいました。
もしも、
大倉商事の副社長が
『なるほど、面白そうじゃないか』
そう、感想を述べられていたなら、
会社の事業として
大手を振って活躍出来ていたことでしょう。
決して楽な事業ではなかったでしょうが、
充実感は半端なかったはずです。
一方、
大家さんを拡大したと言っても、
会社の事業ではなく、
共に喜びを共有する仲間はいません。
人は、
個人だけではなく、
集団と繋がってこそ、
自己を再認識できるのではないか、
そう考えています。
まるで
ムクドリのように。
「ムクドリ?
何の関係があるの?」
夕闇迫る
薄暮の頃、
大空を数万匹のムクドリが
一糸乱れぬ団体行動を取る様子、
ご覧になったことはないでしょうか。
他にもイワシの群れの集団行動……
彼らの動きを
ミリ秒(1000分の1秒)
マイクロ秒(百万分の1秒)
単位で動きを観察すると
百m以上離れた個体が同時に動く様子が
分かります。
彼らは
個体としての意識だけでなく
現在の科学では証明されていない
集団意識と繋がっているからこそ、
こうした団体行動が取れるのではないでしょうか。
私が
大家さんを拡大し始めた当時の
孤独感は、
会社と繋がっていない。
ともに喜びを共有できる仲間もいない。
集団と隔絶されていたからではないか。
そう思います。
兼業大家さんを目指す
皆さんは、
通常の人ではありません。
考えてもみてください。
普段の仕事をしながら、
帰宅して物件をネットで見て
土日には、
〇現場を見たり、
〇仲介業者と打ち合わせをしたり
〇リフォーム業者の見積もりをチェックしたり
されているのです。
通常の人の感覚で申し上げれば、
過労死レベルです。
それを
家族の為、
年老いた未来の自分の為と
現実の自分を叱咤激励し、
前に進むエネルギーがあるのです。
だからこそ、
孤独にならないでいただきたい。
会社には、
当時の私と同様、話せません。
家族も
分かったようなことを言いますが、
本音では
(パパはね趣味なの、
ああいうのが好きなの)
と、あきれているのが実態。
本当に感謝するのは
現実に暮らしが豊かになった後のことです。
だからこそ、
同じ方向を飛ぶ仲間と集団意識を共有していただきたい。
兼業大家さんの仲間と
LINEやSNSで繋がり
オフ会やセミナーで顔を合わせ、言葉を交わす。
こうした行動こそ、
皆さんを孤独から救い出し、
貸家業の大空を飛び回る
自由の羽を与えることになるのです。
兼業大家さんに幸あれ!!
藤山 勇司
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