一人きりの夕食

 

ついこの間のこと、
たった一人で夕食を食べるはめに陥ってしまいました。

 

女房は千葉在住の親戚のお葬式に参列し、
長女は大学で遅く、
長男は体育祭の応援団の練習、
頼みの綱は次女……。

 

幸いなことに、
彼女は高校の中間試験を間近に控え、
所属する剣道部も活動を止め、
いつもより早く帰宅していたのです。

 

「飯食うか?」

「ごめん、アリオで勉強してきてもいいかな」

「ああ、何時に帰ってくる?」

「7時半には、じゃ行ってくる」

 

アリオというのは
近所のショッピングモールでして、
フードコートで
中学の友人と勉強会をするのだそうです。

 

(もう、そんな歳か)

 

確かに、
子供は月日を経るごとに、

家よりも友達、
彼氏や彼女、そして社会人になってゆきます。

 

ただ、高校1年の次女は、
まだまだ私の助力も必要なはず。

美味い夕食を目指し腕によりをかけます。

他の家族の夕食も、
もちろん一緒によそい、ラップをかけました。

 

「そろそろだな……」

 

7時20分、25分と時は進み、
7時半に向け、カウントダウンが迫ります。

 

次女と二人の夕食も、またよし。
彼女の学校生活を肴に花を咲かせればいい。

 

ところがどっこい、
待てど暮らせど、帰ってきません。

 

「なんだ、あいつは」

 

そう思いながら、
パソコンを開きメールチェックをすると、
彼女からメールが届いていました。

 
 

≪パパさん、ごめん
やりたいとこまで勉強するから、先に食べてて≫

 

携帯を持っているのに、メールで連絡……。

怒られるのが嫌だからに違いない。

 

(試験も近いからな、仕方ないか)

 

そう思いつつ、

「いただきます。ご苦労様でした」

と、いつもの挨拶を
一人でする羽目になってしまったのです。

 
 

そして、その夜。

 

誰一人帰らぬまま、
私はベッドに潜り込みました。

毎朝5時半に起きて
弁当を作っているので、
眠くなるのが早いのです。

夜中に目が覚め、トイレに行くと、
用意していた夕食は片づけられています。

 

私が寝ている最中に、
家族は一人、
また一人と帰宅し、
食べたのでしょう。

小便をしながら、
いやなイメージが頭を過ります。

 

((これが当たり前になるのも、すぐそこかもな))

 

社会に必要とされる人間になれ。

パパの息子や娘じゃなく、

「てめぇらの親」

だと、ちゃんとした人に
紹介してもらうことがパパの夢だ。

 

ことあるごとに、
そう子供たちに言ってきたので、
後悔はしていません。

 

ただ、なんとなく。

自分が必要とされることが、
もうすぐ終わるのだな。

 

彼らの人生の中で、

実家で暮らす
「幕」のどん帳は下がり始めている。

 

そう思えました。

 

私は、私一人で存在していません。

親がいて、
祖父祖母がいて、

その先にもずっと途切れることなく
誰かが確実にいらっしゃった。

そして、私の先にも……。

 

今現在53歳と5カ月。

あと、何年生きるのか、
生かされるのか、
それは分かりません。

ただ、いつであっても
誰かに必要とされる人でいたい。

 

2年、もしくは3年後は、
確実に家の中での必要性は
急速に薄れて行きます。

その際は、
外との関わりを
増やして行きたいと思っています。

 

なぜなら、

1人だけの夕食は、
とてもではないけれど寂しすぎる。

実は、
外見と違い、寂しがりやさん なのです。

 

藤 山 勇 司

カテゴリー: 全記事, 生き方 パーマリンク