株式相場波乱の予兆・中国潰しとドイツの苦境

 
私は見た目と違い
臆病な性格を内包しているせいか、

危機に人一倍、敏感です。
 

 
「ふ~ん、で、何かあったの?」

 

ここ最近の株式の足踏み相場は
”通常の足場固め”
ではなく、

リーマンショック以上の
大波乱が起こる

”予兆”ではないかと危惧しています。

 

「んな、バカな。
 

 アメリカの中間選挙もさ、
 共和党が上院で勝利したおかげで、
 下院から

 弾劾裁判されても、
 上院が否決できるし。
 

 外交案件は上院マターだから、
 いいんじゃないの?
 

 それに、
 何か問題があれば、
 トランプさんは

 ”下院の民主党が反対するからだ”

 って、
 大上段から批判すればいいんだし、

 2年後の大統領選挙でも
 当選するでしょ。

 多少の株式の下落はさ、いつもあることだし、

 心配のしすぎでしょ」

 

で、あればいいのですが、
ことは、そう単純ではありません。

 

「何が問題なの?」

 

アメリカは腹を決めて、
中国と対決することを固めたからです。

 

「そんなの前からでしょ……
 今にはじまったことじゃなし、

 5月か6月だっけ?
 中国に強硬に迫り始めたの。

 あれから半年近く経ってるけど、
 アメリカ絶好調じゃない?

 貿易協議もさ次々に
 自分の思い通りに進めてるし、

 失業率も過去最低だっけ?

 株式相場が下落する要因はないでしょ。

 

 中国ともそろそろ
 落としどころを見つけるんじゃないの?

 北朝鮮問題もあるんだしさ」
 

 

 
そうした見方が
主流であることは存じています。

アメリカも中国も どちらも大国であり、
深刻な対立は望んでいない。

いずれ、
両国のメンツを立てた

和解案が練られ、
電撃的に発表されるはず……
 

中間選挙までは、対立姿勢を取るが、
その後は事態収拾に向けて歩み寄りを始めるはず……

 

「いやいや、仰る通りでしょ。

 トランプさんはさ、
 望み通りに上院は過半数を維持しても
 州知事選でもさ、
 次のアメリカ大統領選で重要な
 テキサス・フロリダ・オハイオ 
 を共和党が勝利したし。

 中国との対立は潮時でしょ」

 

中国との対立……

日本では”貿易戦争”と
表現していますが、

その本質は、
”覇権戦争”です。

 

「ウソ、そりゃ、大げさだよ」

 

10月4日の
保守系シンクタンクである
ハドソン研究所において、なされた

ペンス副大統領の演説……

これを素直に読めば、
真正面からの中華人民共和国に対する
”宣戦布告” です。

簡略化すると

・中国はアメリカに不等に介入している

・WTOに参加させたが、自由を尊重するどころか
 抑圧を強めている。

・知的財産権の収奪を実行している。

・南シナ海を軍事拠点化している。

・中国は監視カメラにより全国民が監視下にある。

・宗教の自由はなく、あらゆる信者が迫害されている。

・他国に高利で金を貸し付け、港湾の使用権を
 奪い取っている。

・台湾の民主主義を毀損しようとしている。

・中国国内の外資系企業に共産党委員会の設置と求め、
 技術の譲渡を強要している

 

そして、

最後の最後に
『大統領は引き下がらない!アメリカ国民は惑わされない』
と、締めくくりました。

 

私が想像するに、
この発言を受けて、
最も震え上がったのはドイツです。

 

「ど、どいつって、どこの、どいつ?

 まさか、メルケルさんのドイツ?」

 

そう、
 人口8270万人
 国内総生産410兆円

フォルクスワーゲンやベンツにアウディなど
で有名な、

あのドイツです。

 

「え、

 関係ないでしょ」

 

大ありです。

VW(フォルクスワーゲン)
はグループ会社でして、
ベンツやアウディなどの親会社ですが、
彼らの2017年の総販売台数世界1位

1074万1500台の内
中国 418万4200台
EU 432万8500台

グループの総従業員は62万人です。

 

つまり、

VWグループの約4割は
中国で販売されているのです。
 

しかもアメリカは、
ドイツが中国を裏で
支えていることを知っている。

技術、資金、経営のノウハウも含めて、
ドイツ銀行が仲介役となり、

深く結びついていることを熟知している。
 

中国の覇権意図を
抑えるには、ドイツを締め上げる必要がある。

このことを

・ドイツ銀行
・VW
・メルケル首相

の主要3者は思い知ったことでしょう。
 

「そうかもしれんけど、中国の経済も
 左程悪くないでしょ。違うの?」

8月から
新車の販売台数が
前年割れとなりました。
 

VWの販売台数は約11%減少。
今後の販売も思わしくありません。

 

「確かに
 そうかもしれんけどさ、
 クルマだけの問題でしょ。

 ドイツは他にも
 工作機械とか、いろいろあんだし」
 

ドイツはEUの中心的国家ですが、
本質を調査すると、

左程、威張れるほどの内容で
ないことがわかります。

その問題の核心は、ドイツ銀行です。
 

 
「ドイツ銀行?

 あ~あ、2年前だか3年前に話題になったね。

 でもさ、あれから
 何も起こってないじゃん。

 なんとかなったんじゃないの?」

 

何も良くなっていません。 むしろ悪化している。

しかも、
アメリカが中国に仕掛けた
貿易戦争(実態は覇権戦争)により、

火の粉が
隣家のドイツに飛び火して
小火から大火事に拡大しています。

 

しかも
それを笑いながら、
ガソリンをぶっかけているのが
投資ファンドの

ジョージ・ソロスグループです。

彼らは今年初めから
カラ売りをはじめましたが、
想像を絶する莫大な利益を上げています。

なにせ、
ドイツ銀行の株価は
2017年12月16.54ユーロ 
→ 11月13日8.82ユーロ
ですから、

黙っていても、
儲かる仕組みになっているのです。

 

「ま、そうにしても
 たかが一つの銀行でしょ。
 どうなろうと、大したことじゃないよ」

 

そうは問屋が卸さない。

ドイツ銀行が保有する
デリバリーやCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)
の総額は7900兆円です。

ドイツ一国のGDPが410兆円ですから、
19.27倍……

その中でも理解されやすいのは
ギリシャ国債のCDSでしょう。
 

 

「CDSって、何?」

 

ある債権が支払われない時に、
CDSを購入しておけば、
発行元が元本を保証するという金融工学に
基づいた金融資産です。
 

具体的に申し上げますと、
1億円の債権があったとします。

債権は国債でも社債でも構いません。

満期が5年として
CDSの手数料が年間1%だとすると、
5年分の5%を払えば、
元本が保証されるという仕組みです。
 

仮に国際や社債の利回りが年率2%であれば、
その中から1%のCDS手数料を支払えば
リスクがなくなり、純益1%が残る(2%-1%)。

また、発行元からすると、
国債や社債の発行主が破産や倒産しなければ、
手数料の1%は丸儲けとなる。

 

これがCDSの簡単な仕組みなのですが、
ギリシャ国債のCDSを販売しているのがドイツ銀行です。

発行総額は50兆円以上!
 

つまり、
ギリシャが潰れると、
ドイツの1民間銀行である、

ドイツ銀行が全て被ることになるのです。

 

しかも、

ドイツ銀行は

・フォルクスワーゲンのメインバンクであり、

・メルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)の最大の支援企業

ですから、
ことは1民間企業と片付けることはできません。

「ドイツ銀行って、 利益は幾らぐらいあるの?」

3年連続赤字です。
 

しかも通常の企業で言う、

売上高は、
金利収益と非金利収益の合計金額になりますが、
僅かに、300億ユーロ前後。

全て、利益だと仮定しても
3兆3000億円程度です。
 

破綻状態と言っても過言ではない。

その民間銀行である
ドイツ銀行は、
中国にも巨額な融資を行っており、
アメリカと覇権戦争状態にある中国事情は
完全にデッドロックです。

 

「だ、だめじゃん。どうなるの?」
 

しかも、

ドイツ銀行のCDSは
他の金融機関も保有しており、
ドイツ銀行が潰れると、
ある専門家の見方によれば、

少なくとも

300兆円、
場合によっては
1000兆円のお金が雲散霧消してしまう……
 
 
ちなみに、

リーマンショックの際に消えてなくなったお金は80兆円です。
 

お判りでしょうか?

以上が世界規模の経済状況です。

電子マネーが駆け巡る経済は波乱含み。
割れぬように薄氷をそろそろと進むことしかできません。
 

ところが、
傍若無人にあたりかまわず
突進してくる

トランプ少年の勝ち誇った笑い声が

丘の向こうから聞こえてきます。
 

果たして、これから先どうなるのか?
 

もしも、
不安を覚えるならば、
株式など電子マネー債権を
一度手じまいすることも
選択肢の一つだと考えます。

 

以上、略儀ながら

平成30年最後の冬を迎えて

 

    藤 山 勇 司

 

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