冷やし中華　と　イマジネーション

　昨夜の我が家の夕食は……
　”冷やし中華”でした。

　食卓には、
　ワンタンスープ！
　鳥足唐揚げ！
　そして、
　具材満載の冷やし中華！

　三々五々、
　集合した
　家族は、
　ラインナップを見るなり、
　まるで打ち合わせたかのように、

　口を揃え、
　♪♪ひやしちゅうぅかぁあ～　はじめましたぁあ♪♪

　キッチン藤山の
　料理長である私は
　笑うしか
　ありません。

　考えて見ると、
　不思議と、夏の訪れを肌で感じた途端、
　冷やし中華を食べたくなるものでして、

　昨日も
　なんの前触れもなく、
　昼頃でしたか、
　ふと

（（ひやし、くいてぇ～））

　と、心の奥底から
　声が湧き上り、
　急遽、
　夕食のメニュー決定！
　それだけですと、
　定食屋に入ったのと代わりありませんから、
　　
　付け合わせに、
　鳥足唐揚げと
　ワンタンスープを
　メンバーに入れた次第です。
　　
　夕食時には、
　私が２５歳の時ですから、
　３１年使い続けている
　２１インチサイズの
　ブラウン管テレビを
　何とはなしにつけるのですが……

「ふるっ！！
　ブラウン管？
　化石レベルだね。
　文句でないの？」

　いやいや、
　壊れたら、買おう
　調子が悪くなったら、
　時期が来れば、ね
　
　と、言い続けて
　早１０年ですか、

　テレビ放送も
　地デジに移行して以降
　映像サイズが
　縦３　横４
　　から
　縦９　横１６
　に変更されたからでしょうか、
　テレビの左端や右横のテロップが
　映りません。

　そこで、
　渋り続けてきた
　私も家族の
　総意に押し切られ……

　今のテレビは
　長女の洋画再生用に
　役割を変更し
　空いた席には
　時代に即した
　サイズのテレビを
　導入予定です。

　「へぇ～
　　買い替えるんだ。
　　でもなんで、
　　新機種にしなかったの？」

　頑張ってるから……
　こういうと、変ですかね？
　テレビも
　人も
　頑張り続けるなら、
　役割があるもの。
　古くなったから
　歳をくったから
　そんな理由で
　捨てられるのは
　どうしたものか
　と、思っています。

　しかしながら、
　別の役割を与えることで、
　今のポジションを後輩に
　譲るのはアリ。
　そう思い変え、
　新機種の採用を
　決定しました。

　ただ……

　「ただ、何？」

　いやいや、
　言わずもがなでしょうが、
　私は、機種選定の委員会に
　入れてはもらえません。
　どうも、
　家族に言わせると、
　電子機器の相性が悪い上に
　センスがない！
　から、だそうです。

　まぁ、仕方ありません。
　人は向き不向きですから。

　　
　「なるほどね、
　　で、
　　昨日は、
　　今年最初の冷やし中華を
　　テレビ見ながら、
　　食べたんだ。
　　で、
　　何を見たの？」

　チャンネルをザッピングして
　気に入った番組を見るのですが、
（幸い、チャンネル権は
　５６歳になる今も
　私の手のひらにあります）
　昨夜は、
　おぎやはぎがＭＣの
　”ぶっこみジャパニーズ”
　を視聴しました。

　以前にも見たバラエティでして、
　番組の
　流れは、
　日本由来の
　例えば、
　柔道、
　剣道、
　日本料理、
　を、
　うたい文句にして営業している
　外の教室や店舗に
　日本のレジェンドが
　修行目的で潜入し、
　様々な勘違いを視聴者に暴露！
　その後、
　マスク姿のレジェンドが
　凄ワザを披露し、
　正体を明かす……

　少し、
　いじわるな番組構成でして、
　あまり、好きな番組ではなく、
　いつもは、
　少しすると、他の番組に
　変えていました。

　「最後まで見たの？」

　昨夜の番組は
　２本立てだったのですが、
　一本目だけ見ました。
　潜入役にしてマスクマンが、
　黄綬褒章を受賞した和食界の重鎮・大田忠道
　でしたから……
　キッチン藤山の料理長としては、　　
　気になるところです。

　　　
　「で、どうだった？」

　番組の前半は、
　勘違いの寿司を
　ナレーションや
　コメンテーターに
　より、
　耳を塞ぎたくなるほど、
　こき下ろしていました。

　気分が悪くなり、
　私は、

　「いいか、
　　確かに、
　　唐辛子や
　　ハラペーニョ入りの
　　寿司はな、
　　日本のお寿司とは違う
　　だけどな、
　　見てみろ、
　　食べてる人の”顔”
　　旨そうに食べてるだろ
　　楽しそうだろ。
　　客が金を払って
　　来てるだろ。
　　　
　　わかるか、
　　原理原則と違うから
　　全否定、
　　これじゃ、
　　商売はできん。
　　たっく……」

　私がチャンネルを変えようと、
　リモコンに手を伸ばした瞬間。

　潜入役にして
　マスクマンの
　太田さんのコメントを耳にしました

　『辛いけど、旨いよ。
　　ただ、日本料理とは違うけど。
　　本物の日本料理を
　　試してもらいたいな』

　御年７４歳の
　日本料理界の重鎮でありながら、
　行動と思考は
　フレキシブル！

　私は、
　その先を見たくなり、
　リモコンを
　そっと、
　元に戻しました。

　その上、
　潜入先の
　日本料理店のオーナーやシェフも
　魅力あふれる方ばかり。
　最初は、

　『ミッチー（大田忠道さんの愛称）、
　　和食はイマジネーションなんだ
　　毎日、イマジネーションを掻き立てるんだ』

　そう、
　力説するオーナーの言葉にクスリと
　笑っていましたが、面白い！
　例えば、
　ウナギのお寿司を海老と組み合わせて
　ドラゴンに見立てるなど、
　発想がアメージング！
　丼をアルコール入りのお皿に乗せ、
　着火した上で客に出す、火山丼！
　お客さんは炎を掻い潜りながら
　箸を使わなければなりません。

　彼らは、
　来日したことはありませんが、
　ユーチューブなどで日本の情報に触れ、
　彼らなりに、
　現地の客の舌の好みを考慮し、
　新しい調理を模索しているように
　見えました。

（（どこを着地点にするんだろ？））

　よそ様の番組ながら
　落としどころを心配していました。

　しかしながら、
　それは余計なお世話でした。

　オーナーは　
　早朝に７４歳の御大を呼び出し、
　バスケを従業員全員でやろう
　と言い出し、
　御大も数十年ぶりにボールに触れ、
　心の底から楽しそうでした。
　オーナーは
　歳に関係なく、
　ミッチーを　
　仲間として認めていたのです。

　その後、
　オーナーは
　自宅に招き、
　心の内を明かします。

　””ミッチー
　　オレはいつか日本にいって、
　　和食をしっかりと勉強したいんだ””

　
　その後、
　種明かし……

　和食で
　春夏秋冬
　を表現し、
　オーナーのレストラン
　“ＵＮＩＫＯ”
　で開催された
　ジャパンフェステイバルの
　会場の人を
　おおいに、
　感動させました

　マスクを脱いでもらいたい。
　この感動を直接伝えたい。
　会場の要請は最高潮！

　カウントダウンが進みます。
　テン、ナイン、エイト
　……スリー、ツゥー、ワン
　ミッチーこと御大は
　マスクを脱ぎ、
　正体を明かします。

　見習いとして接していた
　オーナーやシェフは
　アメリカ人らしい驚愕の
　リアクション！

　すると、
　日本料理界の御大は、

　『騙していて、すいませんでした』

　と、深々と頭を下げます。

　そして、
　オーナーは
　それ以上に恐縮し、
　日本料理の本物に触れて
　良かったと、
　互いに感謝の
　エールを交換していました。

　いい番組でした。
　
　そう言えば、
　夕食で作った
　”冷やし中華”
　これも、
　中華の天才料理人からすれば
　邪道だったはず。

　邪道も
　極めて行けば、
　本道に変化する。

　出る杭は打たれると
　良く言われます。

　私は、
　この格言に
　新たに付け加えています。
　もちろん、
　昨夜も口にしました。

　それは、

　””出た杭は打たれる。
　　けれど、
　　出過ぎた杭は柱になる。
　　柱は大黒柱となり
　　家となる。””

　
　お後が、宜しいようで……

　追　伸　：
　　英検準一級の試験結果がやってまいりました。
　　これまで４回連続で落ち続けていました。
　　今回は、そこそこ手ごたえがあったのですが……
　　合格点１７９２点だったのですが、
　　私の点数は１７８６……
　　なんと、６点たりませんでした。
　　あわてず　あせらず　あきらめず
　　今年の秋も、受験いたします！！！

　冷やし中華を作り終えた翌日に

　藤　山　勇　司　　　　　

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