「銀のスプーンと”先送りの電車”」
不安な日々……
先行き不透明……
そして、
最悪の未来……
テレビや新聞を、覗き見ると、
連日のようにネガティブな報道に溢れています。
「いやいや、実際にそうでしょ。
Ｗｉｔｈ コロナだし
景気は悪くなるし
それに、
米中対立だっけ？
へたしたら、戦争になるかもしれないじゃない？」
確かに、春ウララ。
少なくとも
ノンビリした雰囲気ではありません。
ただ……
「ただ、何よ」
そんな、
世の中が
へそ天で大の字に寝転がっていられた時代って
あったでしょうか？
「おりゃ、あんたほど歳じゃないから
よくわからんけどさ、
バブルの頃って、
飲んで騒いで、乱痴気騒ぎだったんじゃないの？」
この頃、
昭和歌謡曲に焦点を当てながら、
当時を語る
懐古趣味の番組が散見されます。
その中で、
バブルや戦後の高度成長……
に憧憬した体験談を口にする
アナウンサーや番組出演者のコメンテーターを
目にします。
皆さんも同じ感想をお持ちでしょうか？
はっきり申し上げて、
とんでもなく、誤解です。
なぜなら、
高度経済成長期、
労働者に、余裕なんてありませんでした。
勤務時間は月曜日から土曜日。
日曜日も残業で、
日本帝国海軍よろしく
♪月・月・火・水・木・金・金♪
（げつ・げつ・か・すい・もく・きん・きん）
で働き詰めでした。
日本の主要河川は、工場の廃液でドブのよう。
高くそびえる煙突から立ち上る排煙が街によどみ、
光化学スモッグ注意報が発令されるのは日常の風景……。
イタイイタイ病で苦しむ人々は無視され、
貧困女性は町で春をひさぎ、
ヒロポンや覚せい剤は人々の精神を蝕んでいました。
「じゃ、バブルはどうよ？
なんか、ディスコだっけ。
ヒョウ柄のボディコンちゃんねぇーが
羽のついた扇子をヒラヒラさせてたじゃない」
バブル……
日本語で言えば”泡”です。
株価は１万数千円から３万８９５７円まで跳ね上がり、
地価は、１９８０年から比較して６倍に……
その影響で、首都圏に働く人々は
一生働いても、一軒の戸建さえ買えないありさま。
その一方、
レバレッジを効かせて株投資をした人々や
土地ころがしに
うつつを抜かした企業や経営者には
”あぶく銭”
が転がり込みました。
「でも、遊んでたでしょ。
芸能人の大御所もバブルは凄かったって言ってんじゃん」
これにも裏があります。
戦後の焼け野原から
高度経済成長を経た日本のＧＤＰは世界第二位！
ソニーは現在の”アップル”と同様、憧れの存在でしたし、
産業の米と称せられていた”鉄”は半導体へ。
その半導体は、
日本抜きには語れない
ぶっちぎりのナンバーワン！
イライラしたアメリカや欧州は
日本人を
”ワーカホリック”
と罵り、
働きすぎはルールに反していると、
半ドンだった土曜日を
隔週完全休日にさせ、
そして、週休二日制導入を
強要させていったのです。
「いいことじゃん。
でもさ、
昔は土曜日も働いていたんだ……
知らなかった」
さらに、
カードを普及させ、
現金がなくても消費ができる。
使いたいときに使わなくて、いつ使うの？
今でしょ！！
と、林修先生ばりにＣＭをバンバン打ち、
庶民に浪費を正当化させました。
また、武富士など金利３０％の消費者金融（サラ金）が
正常な消費者感覚を狂わせていきました。
結果、
住宅なんで夢を持たず、
今日が良ければ、それで良し！
と、開き直り、
土曜日が休みなら、金曜日は遊ぶべし！
と、日本全体が熱に侵されたのが
バブル・ジャパン！
決して、健康体ではありませんでした。
”バブル（泡）”はいずれ弾けます。
住専の不正融資に端を発した、
総量規制は、不動産業者を不況のどん底に落とし、
ＢＩＳ規制で自己資本確保を強要された
銀行は、”貸しはがし”を健康体の企業に実行！！
強制的に血液である”お金”を抜き取られた企業群は
次々に経営悪化……
株価はつるべ落としのように下落し、
都銀２０行は合併を余儀なくされ、
ジャパン アズ ナンバーワンと称された日本は、
失われた２０年を経験することになるのです。
それらに比較して
今の日本はどうでしょう？
「いやいや最悪でしょ」
本当にそうでしょうか？
確かに、
経済に困窮し、
病に苦しみ、明日をも知れない
日々を送られている方はいらっしゃいます。
しかしながら、
相対的に比較すると、
確実に良くなっている！
〇治安は安定し
〇環境は安全となり
〇セーフティネットは張り巡らされています。
仮に、
高度経済成長期のサラリーマンや
バブルの頃の企業戦士
（２４時間働けますか！ ♪リゲイン・リゲイン・リゲイン♪）
の皆さんから見れば、
令和の日本は天国に見えることでしょう。
「じゃ、ノンビリやっていればいいんだ」
そうは申していません。
例え、庶民に逆風が吹き荒れる
高度経済成長期であっても
バブル時代でも
のし上がり、未来を掴んだ方はいらっしゃいます。
一方で、
時代に翻弄され流され続けた人々も存在します。
令和日本、
ありていに申し上げますと……
一般庶民は、大小ありますが
銀のスプーンを口にされている。
・働き口がどこにもない
・飢えて死ぬ
・金がないから病院にも行けない
声をあげれば、
行政や誰かしらが
救いの手を差し出してくれます。
一見すると、
とても良い世界です。
ですが、
”ぬるま湯のワナ”
です。
口を開ければ、食事ができ
手を出せば、何かを貰える。
そんな、
人任せ、国任せ、
の世界は
”バブル（泡）”と同様、
いずれ、弾けることでしょう。
なぜなら、
何も生み出さないシステムの
維持は不可能だからです。
今日が良ければ、
今が良ければ、
多少、我慢できるなら、
現状維持……
多くの庶民は、
”先送りの電車”にデンと座っています。
車内販売は無料……
美味しくはありませんが、食えないこともない
冷えた弁当を、ほおばり
網棚から拾った
政治家や芸能人の
ゴシップ記事に手を叩いて喜び、
時間だけが過ぎてゆく。
ふと、あたりを見渡すと、
始発電車では
満員に近かったのに……
〇資格試験の駅で
〇定期積立の駅で
〇個人年金の駅で
〇株式投資の駅で
〇大家さんの駅で
降りてゆき、
車内は、
櫛の歯が欠けたように寂しくなってゆく。
（まぁ、人は人だ。オレは我が道を行く……）
独り言を口にしながらウツラウツラしていると
……きゃくさん、おきゃくさん……
肩を叩かれる。
うっすらと目を開けると、
到着したのは
「 「 何もしない駅 」 」
時間は、等しく流れてゆきます。
誰も彼も、そして私たちも、同じ時間軸を生きています。
社会の変化を願う！
自分の都合の良い社会になるように声を上げる！
これだけを見ると、
正当な行為であるように思えます。
残念ながら、
その確率は宝クジの１等を神社で願う程、確率が低い……
未来を変えるには、
自ら変化することです。
先送りにする理由の構築に磨きをかけても、
何も変わりません。
座りなれた座席から腰を上げるのは……
” 今 ”
ではないでしょうか？
”先送りの電車を見送り続け令和２年１０月”
藤 山 勇 司
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