「前を向いて」

 

「前を向いて」

 

7月28日、

体操男子個人総合決勝が、有明体操競技場で行われました。

 

結果?

 

ご存じの通り、

予選1位だった、順天堂大学の橋本大輝さん(19歳)が金メダルを獲得しました。

個人総合は、

床 跳馬 吊り輪 あん馬 平行棒 鉄棒

の6種目を一人で演じ切る、非常に過酷な競技です。

 

予選一位。。。

それだけでも凄いのですが、

橋本選手は、

3種目めの吊り輪で、演じた技の一つを認められず、

低い得点で終わってしまいました。

 

テレビのコメンテーターも

 

「何も減点される演目はありませんでしたが、どうしてでしょう?」

 

と、いぶかしげな様子。

日本チームは審判団に確認を求める「インクワイアリ―」を

申し立てましたが、覆ることはありませんでした。

 

通常であれば、

ガックリきます。

 

(なんだよ。おかしいじゃねぇか)

 

落ち込み、義憤に彩られた心理を、

短時間で立て直すのは極めて困難です。

 

そこからの

橋本選手は、凄かった。

 

次の演技、そして次の種目に、集中されていました。

まるで、疑惑のジャッジがなかったかのようでした。

  

事実、金メダルを獲得された後、

当時のことを質問されると、

 

「吊り輪で、少し技が認定されませんでした。少し焦ったんですけど、

 試合は何が起こるのかわかりません。あとに集中して1本やろうと

 切り替えました」

 

と、何でもないことのように、

口にされていました。

 

少し?

 

少しじゃないでしょ。

と、突っ込みを入れたくなりますが、

強がりでもなんでもなく、

心の底から、そう思えているからこそ、

立て直せたのでしょう。 

 

一時は総合順位、4位まで下がった彼は、

一度として、折れることなく、

次の種目に焦点を絞り、

最後の鉄棒では、

14.533点以上を出せば、

金メダルを取れる位置まで

リカバリーを遂げていました。

 

最終種目を前にしてどうだったのかと

問われた橋本選手は。。。

 

「自分がミスなく行けば、間違いなく金メダルはそこにあると思いました」

 

確かな分析です。事実、団体決勝でたたき出した鉄棒の点は15点を軽く超えていました。

 

いじわるな質問者が、

それでも、緊張しませんでしたか?

と、質問すると、

 

「はい、NHK杯で五輪の代表を決める緊張よりは少しすくなく、

 最後は、この場面を楽しもうと、待っている間もずっと、肩を動かして

 わくわくした感じをだしていました。

 メダルの色より記憶に残る演技をしようと思いました!」

 

どうです?

もう、凄いとしか言いようがありません。

 

今回の東京五輪2020!

信じられないほどのメダルラッシュです。

7月28日時点で、 日本は

金メダル13個

銀メダル 4個

銅メダル 5個

 
アメリカ、中国、ロシア(ロシア オリンピック委員会)

を抑えて、順位は堂々の1位です。

 

前回のリオ オリンピックの金メダル12個を

現時点で抜き去っています。

 

これまで最高の金メダル総数は、

2004年のアテネと1964年東京オリンピックの 16個!

 

東京オリンピック2020!

金メダル総数16個を、軽々、抜き去ることでしょう。

 

開催に漕ぎつけるまでの間、

様々な障害がありました。

 

大手マスコミは、

テレビ、新聞を含め、どこも

中止や延期を視野に入れるべきだの大合唱!

 

選手が、前向きな発言をすると、

コロナ禍をなんと心得ると

炎上する始末でした。

 

オリンピックに出場!

それだけで、

本人はもとより、

所属団体、学校、

親族一同の名誉であり、

人生の目標でもあります。

 

身体的能力のピークを維持するのは困難です。

加齢とともに、反射神経は落ちていきます。

後輩は伸び盛りですから、

 

(今なら、今じゃないと)

 

そう感じる選手は一人二人だけではありません。

 

白血病から復帰された

水泳の池江璃花子さんを

なぜ、

情け容赦なく、

あれほどまでに

バッシングできたのか。。。。

 

目にしていて、

やるせなくなるばかりでした。

 

逆風吹きすさぶ、

悪天候の中、

オリンピックに出場する選手の皆さんは

雄々しく、眩いばかりです。

 

「前を向いて 次の一本を あきらめることなく」

 

数多くの共通する言葉を

選手の皆さんからお聞きしました。

 

私は、

現在58歳です。

 

残念ながら、

私の世代に、彼らのような雰囲気はありませんでした。

 

進化しています。

確実にポジティブになり

目の前の課題を楽しむような

心持ちが当たり前になっています。

 

何か、

原因があるのではないか?

 

そう、考えると、

思い当たることがあります。

 

独断と独善で申せば、

一番の原因は、

日本独自の

エンタメです。

 

例えば、

少年ジャンプの主題は

 

「友情 努力 勝利」

 

ガラスの仮面

エースを狙え

ナナと奈々

 

などなど、少女漫画の世界も

逆境から夢を叶えていくストーリーです。

 

日本のコミックが世界で取り挙げられている理由は、

嫉妬 妬み 嫉み

など、マイナスのイメージや感情ではなく、

 

前を向いて、

努力を続ける姿勢こそ

素晴らしいという

ベースに支えられているからではないか?

 

そう、

思えます。

 

一方、

夢を叶える人の陰では、

夢、破れる人も存在します。

 

夢を遂げられなければ、

全てが終わりなのかと言えば、

そうではありません。

 

勝負に臨めた

その事実を認識するべきです。

 

そして、

勝利に終わったとしても

次の勝負が始まっています。

 

仮に、

歴史に残る偉業を成し遂げられなかったとしても、

次の勝負があります。

前を向いて

歩き続ける価値のある偉業があります。

 

事実、

橋本大輝選手を生み出した背景は、

6歳から通いだした千葉県香取市の

佐原ジュニア体操クラブです。

 

今から12年前の

2009年、

人口減少で廃校となった小学校に、

山岸コーチは

高額な体操器具を一つ一つ、

基本的に自腹で買い揃え、

体操の楽しさを伝え続けました。

 

前を向き、歩み続けた山岸コーチは、

 

「廃校から世界一へ」

 

を現実のものにされました。

 

山岸コーチにも

インタビューがあったのですが、

 

橋本選手、やりましたね。

どうですか?

と、問われると。。。

 

「僕が、居酒屋でさ、

 酔っ払いに、大輝はオレの教え子なんだ

 って、言うとね」

 

「酔っ払いは、

 ウソ言えって、言うの」

 

「それをニヤニヤしながら、飲む酒は美味いんだぁ~」

 

と、返されていました。

 

選手だけじゃない。

いついかなる時も

 

  
「前を向いて歩む」

 

尊さを感じた

瞬間でした。

 

以上、橋本選手の金メダル獲得をお祝いしながら。

       藤 山 勇 司

 

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