視点の自由度

 

人は、誰しも自らの地位や年齢、
そして己の考え方から物事を
判断しがちです。

日々の暮らしの中では、
それで問題はないでしょう。

 

ただし、巨額の投資や
借金を伴う行為においては、
心もとないのではないでしょうか。

 

ましてや、
「お任せください。私は不動産業歴37年!
プロですから物件選びから、リフォーム、
それに融資付けも全て完璧です!」

 

なんと、胡散臭い……。

まず、聞いてもいないのに、
業歴を口にする怪しさ。

証明書を提示するわけでもない。
もしかしたら、37年どころか、
4年かもしれない。

 

いったい、誰がプロと認定したのか
判然としない。
自称でしかありません。

 

それに、物件選びから、
リフォームに、融資付け?

 

物件選びは、まぁなんとか分かるにしても、
リフォームは業者に丸投げでしかなく、
融資付けは書類作成だけで、
自分が貸すわけでもない。

 

顧客に、安心感を与えたいのでしょうが、
私には、

「あんたは素人だ。こっちはプロだ。
不動産投資をしたいなら、
プロに任せればいいんだ。
あんたは、素直に頷いて、
ハンコを押しな。
分かったかぁああ!」

と、恫喝しているようにしか聞こえません。

 

もしも、こうした上から目線の
不動産業者に出会ったなら、

「あっ、あ、大変だ。
大事な打ち合わせを忘れていました。
こ、こりゃ大ごとだ。
すいません。
わざわざ、お時間をお作り頂いたのに、
申し訳ない。
これで失礼します」

とか、

事前に打ち合わせをしておいて、
電話を入れてもらい。

「えっええ、そうなんですか?
わかりました。
すぐに向かいますので、
ええ、分かっています」

と、内容を伝えぬまま、
大ごとが起こった印象だけ与えて、
その場を離れるべきです。

もしも、こうした上から目線の
業者の話を聞き続けていると、

 

(なるほど、なるほど、
わかる、わかる。
そうだったのかぁ……)

 

と、催眠状態に陥り、気が付くと
売買契約書に判をつくことに
なるかもしれません。

 

よろしいでしょうか?

 

皆さんは、不動産の素人だとしても、
本業ではプロです。

経理、営業、総務、開発、
接客、事務などなど、
さまざまな職種がありますが、
その道のプロだからこそ、
本業に従事されているのです。

 

本業を持たれている方は、
誠実でまじめな方ばかり、
だから、
日常生活の中で、相手のことを
疑うことから始めたりしません。

不動産業者が
「私は業歴37年」
と言われれば、

(こりゃ、本物だ。私なんかとは全然違う)

と、疑いもせず。

 

「物件選びから、リフォーム、
それに融資付けも全て完璧です」

と言われれば、

(す、すごい。全部できる人って、
凄すぎる。この人に任せればいいんだ)

と、思ってしまう……。

 

本業を思い出してください。
本業の中で、
どれほど、真剣に物事に
向き合っているのか。

間違いはないか、チェックを重ね、
相手の言葉は信じられるのか、
別確度から再確認し、
情報の確度はどの程度か、
検討されているのではないでしょうか。

本業の中で取引相手の言葉を
鵜呑みにするようなことはしないはず。

 

もしも、そんな態度が常だとしたら、
上司には叱られ、取引相手には信用されず、
早晩、配置転換か首になるのがオチ。

皆さんは、すでに情報の真偽を確認する
スキルを既に持っていらっしゃる。
それを、出し惜しみせず、
使えばいいのです。

「どうやって? 不動産の知識なんて
ないしさ、無理だよ」

まず、お客の立場から離れることです。

 

お客の立場という、
視点を外れ、
自らのプロの立場から、
情報をチェックする。

不動産業者の一挙手一投足に目を配り、
本当に信頼できる相手なのか、再確認する。

 

視点を一つに絞ると、
自由度はなくなります。

見るアングルを上下左右、
時には裏から見てもいい。

 

相手が提示した場所から見ることを拒否して、
自由に物件と相手を見るのです。

ツールは、ネットの不動産収益サイト
でも構わないでしょうし、
国土交通省の路線価図も利用できます。

 

そして、業者名に評判と入れて、
どんな悪評が立っているのか、
再確認してもいい。

 

時には、管轄の宅建協会に連絡を入れて、
本当に、業者登録しているのか、
登録ナンバーに間違いはないのか、
などなど、
業者の口からではなく、
別確度から
再確認するべきです。

 

時には数千万、
もしかすると、億を超える
借金を背負うのが不動産投資です。

だからこそ、慎重にも
慎重を重ねて頂きたい。
不動産投資をギャンブルにしては
なりません。

大切なご家族を、ギャンブルに
巻き込んではならないのです。

 

師走、
1年の終わりを迎えるにあたり、
不動産投資に焦る必要はありません。

買えるときには、
縁があれば、買えるもの。

買いに焦ると、
悪縁にからめとられ、
維持費ばかりかかる、
キャッシュフローどころか、
万年赤字物件を背負うことに
なりかねないのです。

 

本業を持つ、皆さんは、
すでに、新規の情報の真偽を
確かめる術を持っていらっしゃるのです。

あとは、
そのスキルを活用すること。

そして、
あわてず あせらず あきらめず
一歩、一歩、歩んでゆけばいいのです。

 

師走を迎えるに辺り、老婆心ながら

藤 山 勇 司

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